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2011年12月29日

「GIKANの組踊喜劇 親雲上八太郎と玉那覇クルルン」初公演

「GIKANの組踊喜劇 親雲上八太郎と玉那覇クルルン」初公演が12月28日(水)国立劇場おきなわ(大劇場)で催された.

組踊喜劇「親雲上八太郎と玉那覇クルルン」は,簡潔で適切な演出・脚色により,傑作コメディと仕上がっていた.朝薫の「二童敵討」,朝敏の「手水の縁」から適当な場面・台詞を採り入れ,沖縄芝居,歌劇と自然に面白く融合して,八太郎の冒頭の唱えに始まり,一応のハッピーエンドまで,沖縄芝居のような明るい感動と笑いを巻き起こしていた.

その喜劇の中で,命は救われたけれども,また百姓に戻り,貧困と飢えが待っている状況に戻って行くだけで,絶対的なハッピーエンドではない.その可能性は終幕で姫君が八太郎たちを救い,二人が再会する場面で芽生えては来たけれども,二人は其々の違う身分に戻ることになってしまう.朝薫の組踊では,身分の違いなども必ず消滅するようなハッピーエンドになるのである

少し違う観点からこの喜劇を見てみる.本コメディは,パンフレット,ティケットでも, 長い4行にわたるタイトルの劇である.そのタイトルの冗長性,具体性から, おそらくこのコメディは組踊ではないだろうと予想していたが,まさに,予想は的中した.

一枚のパンフレットには「組踊コミック」,「組踊喜劇」とあるので,「コミック組踊」,「喜劇組踊」は意図していないのであろうと思うと,ティケットには「新作組踊」公演実行委員会,「組踊喜劇」,「新作組踊喜劇」,「現代組踊②」とあり,困惑してしまった.このコメディを新作「組踊」,あるいは,コミック「組踊」と称しているのである.コミック「オペラ」と称されるオペラはあるのである.

今日の喜劇は,琉球王朝時代を背景とする新作コメディそのものである.その劇の良さは,立方の素晴らしい演技により,舞台上に自ずと創出していたことから,「新作組踊」と称する必要はないはずである.

唯,ここで指摘せざるを得ないのは,如何なる意図があって,「組踊コミック」,「組踊喜劇」,「新作組踊」,「新作組踊喜劇」,「現代組踊」などと,言葉の並びのマッサージで,漠然とした,別の意味を持つメッセージを伝えようとしているのだろうかということである.

演出・脚色の嘉数 道彦氏がプログラムに ” さて上演にあたり,まず述べておきたい事は,組踊喜劇「親雲上八太郎と玉那覇クルルン」は,組踊ではないという事 ” と述べているように,「組踊」ではなく, ” 「組踊喜劇」という新しいジャンルの演劇 ” と捉えたい.少なくとも朝薫の組踊の世界には,明確な輪郭がある.同じプログラムに,他の3氏が,” 新組踊 ”,” 創作組踊 ” などと表現しているのは惜しいことである.

とまれ,組踊喜劇「親雲上八太郎と玉那覇クルルン」は,これから度々演じられる,組踊喜劇の傑作の一つになるであろう.


監修:田中 英機
作・構成:GIKAN
琉球語訳:玉城 正治
演出・脚色:嘉数 道彦

舞踊構成:新崎 恵子
舞台監督:山城 譲二


キャスト

語り部:北村 三郎
薩摩琵琶:櫻井亜木子

親雲上八太郎:当銘 由亮
玉那覇クルルン:呉屋 かなめ
姫君:小嶺 和佳子
大主:宇座 仁一
共1:川満 香多
共2:玉城 匠

地謡

歌・三線:花城 英樹,横目 大哉
筝・十七絃:具志 幸大
笛:豊里 美保
太鼓:髙宮城 実人
日本筝:宮城歌那乃




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Posted by kariyushi-village at 00:40│Comments(0)組踊
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