野村流音楽協会組踊地謡研修部自主公演:「朝薫五番」一挙上演

kariyushi-village

2013年04月28日 23:32

2013年4月7日,うるま市民芸術劇場響ホールにて,野村流音楽協会組踊地謡研修部自主公演として,「朝薫五番」が一挙上演された.その寸評を箇条書きする.

まず,前座での,朝薫五番の全体案内説明は,いかにも組踊らしくなく,冗長過ぎた."芝居士ぬ如るあゆる"との声が聞こえた.簡潔さと楽しさのバランスが必要だった.

1. 銘苅子

銘苅子出羽の笛が良くなかった.緊張のせいか音切れなどで,羽衣も降りてくるような,爽やかな雰囲気が出せなかった.通水節の歌い出しで,歌三線の1名の合図の首の上下振りが目立ち過ぎた.東江節の独唱部分”アーキー"が細過ぎる声で,悲愴さが表現できていなかった.子持節も声が細く高過ぎた.終幕の立雲節も,声が細く高い.そのような甲高く細い声での組踊の歌三線は違和感があり,静寂感が創出できない.子役おめけりの唱えは高さおよびボリュームとても良かった.残念ながら,立方には,遥かに及ばない地謡の歌唱レベルであった.

2. 執心鐘入

干瀬節1,干瀬節2の歌い出しが致命的な音程狂いで始まった.それに加えて,声も充分歌いこなしていないそれであった.干瀬節の歌われる時の太鼓の囃子は不要であった.歌三線5名の頭の傾きがバラバラであった.独唱でまともに歌ったのは干瀬節3と散山節だけで,それに,いずれも声が細く強烈さに欠けていた.鬼女出現時の笛の音切れはひどかった.全体として,冒頭から躓きが続いては,力の発揮しようがなかった.これも充分歌いこなしていなかったことによる.残念ながら,この地謡のレベルは低すぎた.

3. 女物狂

子持節1は高音で裏声のように響いた.子持節3も声が細く高かった.一方,散山節と“アーキー”は素晴らしい歌三線であった.また,終幕の立雲節も素晴らしかった.

4. 孝行の巻

おめけりとおめなりの唱えはあまりにも高音で,組踊のそれとは思えなかった.大蛇出現時に観音像が途中まで2度も降りてきて留まっていたのは操作誤りだった.姉弟の唱えと終幕屋慶名節の歌い出しの音程狂いに眼をつぶれば,全体的に,立方と地謡のまとまった組踊ではあった.

5. 二童敵討

冒頭出羽の按司手事は,弾きだしが不揃いであった.すき節歌い出し時に,首を上下に振る合図が目立った.仲村渠節2番手の歌三線は充分歌いこなしていない.散山節も歌い込み不足で,声が未熟であった.その節にとって大事な“当て”も無し,“ゐし”も無しだった.まだ工工四のそれらの表記が見えていないようだ.また,後半の弦間違いは致命的な類いであった.伊野波節は声量があり,良かった.全体として,この歌三線も,充分歌いこなしているとは言いがたいレベルであった.立ち方について,あまおへは動きがやや老人のようで,時の権力者に成り上がろうとする者の覇気があまり強烈には現れていなかった.

結びに,"五番"一挙上演に関して,全体的な感想を述べる.

立ち方について,組踊地謡研修部の伝統的な方式である(今回の“女物狂”は例外であったが) 組踊研究所ごとに分かれて,一番毎の担当をお願いするのではなく,5研究所に立ち方の合同編成を依頼すると,もっと五番の素晴らしさが現れると期待できる.ぜひこの方式を立ち方の研究所に持ちかけて欲しい.

地謡の研修については,指導者はもっと厳しさが必要であり、地謡は訓練を重ねて体で歌三線をやるのであり,頭と声で歌うのではないことを認識して,鍛錬して欲しい.



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