「現代版組踊 玉城朝薫伝 ~組踊の誕生~」公演

kariyushi-village

2011年12月26日 20:22

「琉球浪漫シアター 現代版組踊 玉城朝薫伝 ~組踊の誕生~」公演が12月25日(日)那覇市民会館中ホールで催された.

出演は那覇青少年舞台プログラムのメンバーに加え特別出演の総勢40余名であった.

玉城朝薫が当時の大和芸能の影響を受け,琉球王朝の舞踊を組踊として,組み立て,創り上げる歴史的過程を「ミュージカル」として表現したものである.

組踊の創造過程そのものは,あまり明示的には演じられていないけれども,「ダンシング」あるいは「ミュージカル」として,楽しい歌とダンスが繰り広げられた.特に,終幕近く,群舞の中,朝薫による琉球舞踊,空手,エーサーを融合したダイナミックな「ダンス」は感動的であった.

数年前大反響を呼んだ,感動的なミュージカル「肝高の阿麻和利」と同じく,決して「組踊」ではないけれども,「玉城朝薫伝」も「現代版組踊」と称して反響を呼びつつある.

これまでニューズメディアも,公演ティケット,パンフレットにも,「現代版組踊」を「組踊」と並べて,あたかも実体があるかのように用いて来た.

想像するに,「現代版」は「組踊」を修飾するのではなく,切り離さず「現代版組踊」は一句としてコイン(coin)され,普通なら「ミュージカル」でも良いのに,曖昧であるけれども,衆目を捉える「現代版組踊」的な「ミュージカル」と敢えて表現し続けているのである.

「現代版組踊」には参照する実体は無いに違いない.「組踊」と言う実体にぼんやりと関係づける何かがあると言うだけでは,「組踊」ではあり得ないのである,そして,それを明白に承知で,イメージ創りにうまく活用している.

奇妙なことに,「現代版組踊」を演じている青少年たちは,決して「組踊」を演じているとは思っていない.おそらく,「ミュージカル」を踊っている(ダンシング)と思っているであろう.

いみじくも,朝薫は,そのミュージカルの終幕に “浦添市の国立劇場おきなわで,朝薫の「組踊」を鑑賞できます” と呼びかけていた.

「現代版組踊」は,今では,トレードマーク的にあちらこちらで使われている.意味不明のまま,既に鋳造された格好のキャッチフレーズとして,メディアがこのまま安易に使い続けていくと,「現代版組踊」は動いている煙の輪郭の様に,すごく曖昧な言葉となっていくであろう.トレードマークとしてはともかく,演劇に関わる人たちは,その意味不明な言葉の一般的な使用を自然に止めるべきであろう.

主催:一般社団法人 TAO Factory, (株) 琉球トライアウト


関連記事